映画『花の億土へ』/藤原書店ホームページ
未来はあるかどうかはわからないけれども、希望ならばある。
文明の解体と創世期が、いま生まれつつある瞬間ではないか。
東田シネマvol.10は、熊本県天草郡出身の詩人、作家の石牟礼道子さんが語る文明。その病を描いた作品『花の億土へ』を上映します。
9/25(金)13:30/15:45/18:00
9/26(土)13:30/15:45/18:00
9/27(日)13:30/15:45/18:00
一般の前売予約チケット1000円/当日1200円 大学・高校500円
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文明の病
文明化する日本社会の中で起きた水俣水銀中毒事件をモチーフに、「近代とは何か」を現代人に突きつけた名著『苦海浄土』。本映像作品は、その作者として知られる石牟礼道子さんに、来るべき世について語っていただいた最後のメッセージである。この数年われわれは、不知火海の地に住む石牟礼さんを幾度も訪ねた。
パーキンソン病に苦悶しつつ日々を送っておられる石牟礼さんから、文学とは何か、詩とは何か、新作能の新たな構想、最後に文明社会のゆくえなどを語っていただいた。その中で石牟礼さんは「祈り」や「犠牲」という、われわれ現代人が失くしてきた言葉を強調された。映像は、水俣・天草・不知火海はいうまでもなく、60年代の水俣漁村の風景も用い、それに金大偉の独創的な音楽を加えた。
原郷の色彩と光から発せられる鎮魂映像詩として
21世紀になった今も、世界では紛争・テロや様々な混乱および環境破壊などが続いている。こうした中、石牟礼道子の世界を映像化することによって、一連の 強い問題提起をなすことができる。本作品では、その文学世界の広がりや歴史性、美学性、宗教性、そして「文明の毒」としての公害である「水俣病事件」の意 味などを深々と掘り下げることをテーマとする。作中では、石牟礼氏への多元的なインタビューや作品の語りを多用。また不知火海の四季の風景やイメージ映像 による構成は、詩人・作家である彼女の最終メッセージであると同時に、「幻想的リアリズム」としてのドキュメント映像詩でもある。
本作は現在、また近い将来、人々が自然との共生において最も必要とする、石牟礼世界から発せられる深い啓示を明かす新しい映像表現と捉えることも可能であ る。鎮魂の世界の深層から呼び起される不知火海――そこに浮かび上がる「あの世」と「この世」の時空、過去・現在・未来の時空、さらに「光」が循環する 姿。そこに夢と希望が秘められている。
私はこの制作を通じて、自分の内面に向かって、あるいは魂へ向かって旅をするような感覚を体験した。何か重いものを背負っているように感じると同時に、進 む方向には仄かな光があるかのように見える。すべての生き物が共生できるように、人々は夢と希望を持って、他者への祈りや祝福をしなければならない。これ は純粋な初心に還ることでもある。希望はまだ精神の火のように灯されており、それが消えない限り、人々は共生の循環のなかに居続けることができるであろ う。 監督・金大偉
石牟礼道子さん
1927年、熊本県天草郡に生れる。詩人。作家。『苦海浄土――わが水俣病』が、文明の病としての水俣病を鎮魂の文学として描き出しとたして絶賛。73年 マグサイサイ賞。86年西日本文化賞。93年『十六夜橋』で紫式部文学賞。01年度朝日賞。『はにかみの国――石牟礼道子全詩集』で02年度芸術選奨文部 科学大臣賞。藤原書店より刊行されたものとして、『石牟礼道子・詩文コレクション』(全7巻)、初の自伝『葭の渚』、本作品撮影時の語りの全てを収めた単 行本『花の億土へ』ほか著書多数。04年4月から刊行された、『石牟礼道子全集・不知火』(全17巻・別巻1)が14年5月に完結。
(藤原書店ホームページより)
出演:石牟礼道子(いしむれ・みちこ)
監督・構成・撮影・編集・音楽:金大偉(きん・たいい)
ナレーション:米山実
音楽ゲスト:大倉正之助/原郷界山
写真提供:桑原史成
プロデューサー:藤原良雄
制作:藤原書店
2013年度作品/113分/ハイビジョン/16:9